国債価格とは?株式との関係を基礎から実務まで徹底解説

株の用語
2025.09.24
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国債価格とは、政府が発行する債券(国債)の市場における取引価格のことです。投資の現場では、国債価格と利回り(イールド)の動きが金融資産全体、とりわけ株式の評価に直接・間接の影響を与えます。価格と利回りの逆相関、金利やインフレの見通し、中央銀行のスタンス、投資家のリスク選好といった要因が複雑に絡み合い、株式市場のトレンドやセクター間の勝ち負けを左右します。

本記事では、国債価格の基本メカニズムから、価格を動かす具体的な要因、株式との相関構造、日本市場の固有事情、そして実務での読み解き方までを体系的に整理します。検索上位で語られる定番トピックを押さえつつ、重複を避けて実務で役立つ視点に踏み込みます。

国債価格の基礎:価格と利回りの逆相関

国債は将来のクーポン(利払い)と満期償還金の合計キャッシュフローに対して、投資家が求める利回り(割引率)で現在価値を計算することで価格が決まります。割引率が上がれば現在価値は下がるため、国債価格は下落し、利回りは上昇します。逆に割引率が下がれば価格は上昇し、利回りは低下します。この「価格と利回りの逆相関」は、株式を含む他資産の評価にも波及する基本原理です。

クーポン、最終利回り、クリーン/ダーティ

  • クーポン債は定期的に利払いがあり、ゼロクーポン債は利払いがなく割引発行されます。
  • 最終利回り(YTM)は、現在価格で購入して満期まで保有した場合に得られる内部収益率です。
  • クリーン価格は経過利息を除いた価格、ダーティ価格は経過利息を含む取引価格です。

デュレーションとコンベクシティ

金利感応度を測る代表指標がデュレーションとコンベクシティです。デュレーションが長いほど、金利が同じだけ動いたときの価格変動が大きくなります。コンベクシティは金利変動に対する価格の曲率(非線形性)を示し、大きいほど大幅な金利低下局面で価格下落を緩和し、上昇局面では下落をやや助長します。実務では「デュレーション×金利変動幅」でおおよその価格インパクトを見積もり、コンベクシティで補正します。

国債の安全性とベンチマーク性

通貨発行権を持つ政府の国債は通常、信用リスクが極めて低く、市場金利のベンチマークとして機能します。株式の割引率や企業債のスプレッド、住宅ローン金利など多くの価格付けが国債利回りを起点に決まります。このため、国債価格の変動は金融市場全体の「土台」の揺らぎと等価です。

価格を動かす要因:金利、インフレ、信用、需給

政策金利と期待の連鎖

国債利回り、とりわけ短中期ゾーンは、中央銀行の政策金利とその将来経路(フォワードガイダンス、ドットプロット、金利先物の織り込み)に強く反応します。長期ゾーンは政策の持続性、成長率とインフレ期待、タームプレミアムの変動が効きます。利下げ観測は価格上昇(利回り低下)を、利上げ観測は価格下落(利回り上昇)を招きます。

インフレと実質利回り

名目利回りは「実質利回り+インフレ期待」で分解できます。物価上昇が加速すれば、同じ実質利回りでも名目利回りは押し上げられ、価格には下押し圧力がかかります。逆にディスインフレが進めば価格は支えられやすくなります。インフレ連動国債(ILB、TIPS)市場から逆算されるブレークイーブン・インフレ率は、インフレ期待の定点観測として重視されます。

信用・流動性・規制

  • 信用:先進国の国債は信用リスクが極小ですが、財政悪化や格下げ懸念はタームプレミアムを押し上げ、価格に下押しを与えることがあります。
  • 流動性:市場機能が低下すると売買コストが上がり、需給歪みが価格に影響します。
  • 規制・会計:保険・銀行の資本規制、ALM、会計ルールは、特定満期の国債需要を恒常的に生み、イールドカーブの形状に効きます。

需給とテクニカル

  • 入札・買入れ:政府の発行計画と中央銀行の買入れ(量的緩和や長期国債の運用方針)は、価格形成に直接的です。
  • ヘッジコスト:為替ヘッジ付き海外債券との相対妙味は、内外金利差とベーシスの変動で需給を左右します。
  • 季節性・指数リバランス:月末や期末、指数入れ替え時のフローが短期的な歪みを生むことがあります。

イールドカーブの形状

スティープ化(長短金利差の拡大)とフラット化(縮小)、さらには逆イールドは、景気サイクルのシグナルとして広く参照されます。一般に、景気減速や利下げ観測が強い局面ではフラット化・逆イールドが進み、リセッション後半から回復初期にかけてはスティープ化が進みやすい傾向があります。

株式との相関メカニズム:割引率、景気サイクル、リスク選好

割引率とバリュエーションの橋渡し

株式の理論価値は将来キャッシュフローの現在価値です。この割引率は「無リスク利子率(国債利回り)+リスクプレミアム」で構成されるのが通例です。国債利回りが上昇すれば、他条件が一定のもとでは株式の現在価値は低下しやすくなります。特に将来の成長期待を織り込むグロース株は「株式デュレーション」が長く、金利上昇に敏感です。一方、金利上昇が景気の強さ(利益成長)を背景にしている場合、増益効果が割引率上昇を相殺し、株価が耐える・むしろ上がることもあります。

景気サイクルとセクターローテーション

  • 利下げ局面:ディフェンシブや高配当、債券代替の公益・通信が相対優位になりやすい。
  • 利上げ初期:金融(銀行・保険)は利鞘拡大期待で底堅く、景気敏感やバリューが見直されやすい。
  • 金利急騰:バリュエーションの高いテック・グロースが調整しやすいが、実績キャッシュフローの厚い大型テックは相対的に耐性を見せるケースもある。

リスクオン/オフと相関の時間変動

平時には「金利↑=株式↓」の関係が語られがちですが、ショック局面では「安全資産としての国債買い(価格↑)と株安」が同時に進み、相関が負に強まります。一方、スタグフレーションのようにインフレショックが主因の場合、国債と株式が同時に売られることもあります。相関は環境依存であり、固定的ではありません。

評価指標の連関:益回り、リスクプレミアム、WACC

  • 益回り(Earnings Yield)と長期金利の比較は市場の割高・割安感を測る素朴な手がかりになりますが、インフレや成長性、タームプレミアムを無視すると誤解を招きます。
  • 加重平均資本コスト(WACC)は国債利回り上昇で押し上げられ、投資採算やM&Aのハードルを高めます。
  • 株式リスクプレミアム(ERP)は、国債利回りと期待収益の差。利回り上昇局面でERPが十分に厚ければ株は耐え、薄ければバリュエーション調整が進みやすい。

米金利・ドルの波及、グロース/バリューの金利感応度

世界株のディスカウントレートは米長期金利に強く影響されます。米金利上昇とドル高は新興国や外需企業の資金調達コスト、為替換算に影響し、セクターの相対パフォーマンスを塗り替えます。金利感応度は銘柄の成長期間、配当性向、負債比率、規制などで異なる点も重要です。

日本市場の文脈:JGB、YCC、為替、金融機関の行動

YCCの変遷と市場機能

日本銀行は長らくイールドカーブ・コントロール(YCC)を通じて長期金利の変動幅を管理してきました。2023年には上限運用を柔軟化し、2024年にかけてはマイナス金利の解除とともに国債買入れの運用が段階的に見直され、市場機能の回復が進みました。これにより、JGBのボラティリティや期間プレミアムが以前より意識され、株式の割引率にもリアルタイムに反映されやすくなっています。

為替と外債ヘッジコストの連鎖

日米金利差の拡大は円安とヘッジコスト上昇を通じて、国内機関投資家の外債需要やJGBへの回帰に影響します。為替ヘッジコストが高い局面では、ヘッジ付き外債よりJGBの相対魅力が増し、特定年限の需要が高まることがあります。為替と国債利回りの連動は、輸出企業の採算や株式セクターの相対パフォーマンスにも波及します。

銀行・保険・年金のALMと国債需要

  • 銀行:預貸ギャップと有価証券運用でデュレーションを調整。金利上昇局面では含み評価に揺れが生じる一方、利鞘改善が収益を下支え。
  • 保険:負債期間が長く、長期国債や超長期ゾーンの需給に影響。ソルベンシー規制や金利前提の見直しも需要の鍵。
  • 年金・GPIF:戦略的アセットアロケーションの中で国内債の役割を再評価。ボラティリティ・バジェットと相関で配分を微調整。

株式セクターへの波及:金融、高配当、内需/外需

金利上昇は金融セクターの収益機会を広げやすく、ディフェンシブ高配当株の相対妙味は金利水準に左右されます。外需企業は為替の追い風を受ける一方、世界金利上昇による需要鈍化や資本コスト上昇に注意が必要。内需企業は融資コストと個人消費のバランスを注視します。JGBの価格変動が株式の「割引率」「為替」「資金フロー」を通じて三重に作用する点が、日本市場の特徴です。

実務での活用:ポートフォリオ構築、ヘッジ、指標の読み方

シナリオ別の注目点

  • ディスインフレ・緩やかな成長:国債価格は底堅く、グロース株が相対優位。デュレーション長めの債券と質の高い成長株の組み合わせが機能しやすい。
  • リフレーション・適温成長:長期金利はじわり上昇、株は利益成長で耐える。金融・景気敏感のローテーションが働きやすい。
  • スタグフレーション:国債と株が同時に難しい局面。実質資産(コモディティ、インフレ連動債)や短期デュレーションで防御。
  • 急速な利下げ(景気悪化):国債価格は急騰しやすいが、株は利益下方修正で不安定。ディフェンシブ・クオリティ志向が強まる。

指標ウォッチリスト

  • 国債利回りとカーブ:2年/10年/30年、スプレッド、スティープ化・フラット化の方向。
  • 実質利回りとブレークイーブン・インフレ:TIPS/ILBを通じた期待インフレの変化。
  • 政策金利の織り込み:OIS、金利先物、中央銀行の声明や経済見通し。
  • 需給:入札結果、中央銀行買入れ方針、指数リバランス、ヘッジコスト。
  • マクロ:雇用、CPI/PCE、PMI、賃金、財政政策、地政学リスク。

株式評価への落とし込み

国債利回りの変化は、割引率、比較対象(配当利回り・益回り)、資金コスト(WACC)を通じて株式の「適正レンジ」を動かします。実務では、セクターごとの金利感応度を推定し、国債利回りシナリオに対する想定パフォーマンスをマトリクスで管理します。バリューとグロース、国内と外需、ディフェンシブとシクリカルの「軸」を意識した配分が有効です。

ヘッジと実行手段

  • 債券先物・金利スワップ:デュレーションのオーバー/アンダーを機動的に調整。
  • ETF:国債・社債・インフレ連動債ETFでエクスポージャーを簡便に構築。
  • オプション:ボラティリティ上昇に備えたテールリスク対策を付加。
  • 通貨ヘッジ:為替と金利の二面リスクを分離して管理。

リスク管理の要点

  • 相関の非定常性:平時とストレスで債株相関は変わる。固定前提での分散効果見積りは危険。
  • 流動性:ストレス時の板厚やヘアカット、担保要件を考慮し、実行可能性の高い手段を選ぶ。
  • 計測:デュレーション、ベータ、ファクター露出、シナリオVaRを組み合わせる。
  • ガバナンス:リバランスルールと損失許容度を事前に定義し、裁量の暴走を防ぐ。
用語メモ
  • 国債価格:市場で成立する取引価格。利回りとは逆方向に動く。
  • 利回り(イールド):投資収益率の尺度。最終利回り(YTM)が代表。
  • デュレーション:金利1%変動に対する価格感応度のおおよそ(年単位)。
  • イールドカーブ:満期別の利回り曲線。景気のシグナルとして重視。
  • YCC:イールドカーブ・コントロール。長期金利の変動幅を管理する枠組み。

まとめると、国債価格は金利・インフレ・需給・規制によって動き、その変化は株式の割引率、資金コスト、為替、投資家の行動心理を通じて多面的に波及します。国債価格と株式の関係は単純な一対一対応ではなく、環境に応じて相関が入れ替わります。投資家は、国債市場のダイナミクスを「土台」として常に観測し、資産配分・セクター選択・ヘッジ戦略に落とし込むことが、安定した超過収益の鍵となります。

実務での第一歩は、日々の利回りカーブとインフレ指標、政策期待の変化をウォッチし、それを株式のシナリオに翻訳するプロセスを定着させることです。土台(国債価格)を正しく読むことで、表層のノイズに振り回されにくい一貫した意思決定が可能になります。

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