成行注文とは?初心者にもわかりやすく解説・方法を丁寧に

成行注文(なりゆきちゅうもん)は、株式やFX、暗号資産などでよく使われる基本の発注方法です。いちばんの特徴は「価格を指定せず、今すぐに買う・売る」こと。スピード重視で約定を優先するため、細かな価格にこだわらず取引を成立させたいときに役立ちます。
ただし、便利な反面、思っていたより不利な価格で約定してしまう可能性もあります。この記事では、成行注文の意味、メリット・デメリット、やり方や注意点、ほかの注文方法との使い分けまで、できるだけ専門用語を避けながらやさしく解説します。これから取引を始める人はもちろん、すでに口座を持っている人の復習にも役立つ内容です。
成行注文とは何か(基本の考え方)
成行注文は、買うときは「今の最良の売り価格で買う」、売るときは「今の最良の買い価格で売る」という出し方です。価格を決めない代わりに、目の前の市場にある注文と素早くぶつけて取引を成立させます。だからスピードは速いけれど、約定する価格は発注の瞬間まで確定していません。
なぜ価格を指定しないのに成立するの?
市場には「板(いた)」と呼ばれる、買いたい人・売りたい人の並びがあります。成行注文は、その並びのうち最も近い価格(最良気配)から順にぶつかっていく仕組みです。たとえば、1000円で売りたい人がたくさん並んでいれば、その価格ですぐ買えます。もし1000円に在庫(注文)が少なければ、1001円、1002円…と上に登っていき、必要な数量がそろったところで約定します。
約定までの流れをイメージ
- 買いの成行を出すと、今ある最安の売り注文から順に買い取る
- 売りの成行を出すと、今ある最高の買い注文から順に売っていく
- 数量が多いと、価格が階段状に動いて約定することがある
よくある誤解
- 「成行=必ず一番お得な値段で買える」ではありません。あくまで今ある板にぶつけるだけです。
- 「チャートの表示価格で必ず買える」わけでもありません。表示は一瞬前の価格で、約定はつねに動いています。
つまり、成行注文は「スピード優先で、とにかく成立させる方法」。価格の確実性は低くなりますが、機会を逃さない強みがあります。
成行注文のメリットとデメリットをわかりやすく
メリット
- 成立が速いので、チャンスを逃しにくい
- 重要なニュース直後や急騰・急落時でも、とりあえずポジションを作れる/手仕舞いできる
- 発注ミス(細かな価格入力ミス)を減らせる
- 出来高が多い銘柄・時間帯なら、価格のズレが小さく済むことが多い
デメリット
- 想定より不利な価格で約定することがある(価格のズレ)
- 板が薄い(並びが少ない)と、大きくすべるリスクがある
- 大口の数量を一気に出すと、価格が階段状に悪化しやすい
- 取引所によっては、成行に対する手数料がやや高い場合がある
向いている場面・向かない場面
- 向いている場面:すぐに入りたい、すぐに手仕舞いしたい、指値の待ち時間を避けたいとき
- 向かない場面:価格を厳密にコントロールしたい、板が薄い銘柄や時間帯、数量が非常に多いとき
具体例でイメージ
例:株価が1,000円前後の銘柄で、最良売りが1,000円、次が1,002円、1,005円…と並んでいるとします。あなたが成行で500株買いたいのに、1,000円には200株しかなければ、残りは1,002円や1,005円にもぶつかります。結果として平均約定単価は1,000円を少し上回るかもしれません。小さな数量なら影響は小さくても、数量が増えるほどズレは大きくなりやすい、というわけです。
成行注文のやり方(株・FX・仮想通貨での基本手順)
取引ツールやアプリのデザインは各社で違いますが、成行の使い方はおおむね共通です。ここでは、迷わず操作できるように、シンプルな流れで説明します。
共通の基本手順
- 銘柄(通貨ペア)を選ぶ
- 注文画面で「成行」を選択
- 買い or 売り、数量を入力
- 確認画面で内容をチェック(数量・方向・想定コスト)
- 発注ボタンを押す(ほぼ即時で約定)
株式の例
株式は取引時間が決まっており、寄付きや引けなど特有のタイミングがあります。注文画面で「成行」を選ぶと、即時に市場の最良気配へぶつかります。朝の寄付きで使う「寄成(よりなり)」、引けで使う「引成(ひけなり)」といった指定が可能な証券会社もあります。寄成は寄付きで必ず約定させたいときに、引成は大引けで手仕舞いしたいときに便利です。ただし寄付き前は注文が積み上がるため、思わぬギャップ(飛び)で始まる可能性がある点に注意しましょう。
- 数量は無理のない範囲で。大きい数量は分割して出すと価格のズレを抑えやすい
- 取引直後や引け前は価格が動きやすいので、板の厚さをチェック
FXの例
FXはほぼ24時間動いており、成行は「今のレートで即時に約定」を意味します。発注後はすぐにポジションが持てるため、ニュース直後などでスピードが重要なときに使いやすいです。一方で、指標発表直後はレートが一気に飛ぶことがあり、想定外の価格で約定しやすい時間帯でもあります。ポジションを持ったら、損失を限定するための逆指値(指定価格に触れたら自動で手仕舞い)を同時に設定しておくと安心です。
暗号資産(仮想通貨)の例
24時間365日動くため、深夜や早朝は板が薄くなることがあります。成行は素早く約定しますが、急な値動きでズレが大きくなりやすいのも事実。取引所によっては、成行の手数料が指値より高く設定されているケースもあるので、料金表を事前に確認しておきましょう。小さめの数量から試し、状況を見て追加する分割発注が有効です。
スマホアプリでの小ワザ
- 発注前の最終確認画面をオンにして誤発注を防ぐ
- 板表示を大きくして、厚い価格帯を見極める
- ウィジェットやアラートで、急変の通知を受け取る
- よく使う数量をプリセット登録して、慌てて入力しない
失敗しないためのコツとチェックリスト
成行注文は便利ですが、ちょっとした配慮で安全性と満足度が大きく変わります。下のチェックリストを習慣化して、ムダな損失や焦りを減らしましょう。
発注前のチェックリスト
- 板の厚さは十分か(薄いときは数量を小さく、または時間をずらす)
- スプレッドや気配の開きは大きくないか(特に早朝・昼休み・イベント前後)
- 経済指標・決算・要人発言など、直近のイベント予定はないか
- 数量は適切か(一度に出しすぎない、分割を検討)
- 損切りの位置を決めているか(逆指値などの自動手仕舞いを併用)
- 手数料の仕組みは理解しているか(成行のほうが高い場合がある)
価格のズレ(すべり)を抑えるコツ
- 出来高が多い銘柄・時間帯を選ぶ
- 数量を分けて出す(小分け発注)
- 板の厚い価格帯に近いタイミングで発注する
- 急変時は「まず小さく入って、落ち着いてから追加」
寄成・引成を使うときの注意
寄成は「市場が開いた瞬間での約定」を狙う方法で、ギャップ(前日終値からの飛び)が起きやすいです。引成は「その日の終わりの価格で必ず手仕舞いしたい」ときに便利ですが、引け直前は注文が集中して価格がぶれやすいことも。どちらも「確実に約定させる」代わりに、価格のコントロールは弱くなる点を理解して使いましょう。
リスク管理の考え方
- 1回の取引でリスクに晒す金額(または割合)をあらかじめ決める
- 保有中は逆指値などの自動手仕舞いを活用して、想定外の大損を避ける
- ニュースやイベントで相場が荒れる日は、数量を抑えるか様子見する
- うまくいかない日は深追いしない。連敗時は一度クールダウン
メンタル面のヒント
成行は「すぐにできる」からこそ、感情の勢いで押してしまいがちです。発注前に深呼吸して、チェックリストをひとつでも声に出して確認するだけで、無駄なエントリーは減ります。焦りは高くつく、を合言葉にしましょう。
指値注文など他の注文方法との違い・使い分け
成行注文に対して、指値注文は「この価格なら買う(売る)」と値段を決めて出す方法です。指値は価格のコントロールに優れますが、希望価格に届かなければ約定しません。どちらが良い・悪いではなく、場面に応じて使い分けるのがコツです。
成行注文 vs 指値注文
- スピード:成行は速い/指値は待つことがある
- 価格の確実性:成行は弱い/指値は強い
- 約定の確実性:成行は高い/指値は低い(届かないと約定しない)
- 向く場面:成行は「急ぎ」「逃げたい」「入り損ねたくない」/指値は「価格を厳密に管理したい」「落ち着いて待てる」
逆指値との組み合わせで安全性アップ
たとえば、まず成行で素早くエントリーし、その直後に逆指値で損切りを自動設定しておくと、万一の急変でも傷を最小限にできます。逆に、エントリーは指値で落ち着いて待ち、決済は逆指値で機械的に手仕舞いする、という流れも有効です。名称や設定方法は会社ごとに少しずつ違うため、口座のマニュアルで手順を確認しておきましょう。
まとめ:使い分けの目安
- 今すぐ成立させたい=成行
- 価格を決めて待ちたい=指値
- 損失を自動で限定したい=逆指値を併用
- 板が薄い・数量が多い=分割や時間調整でズレを抑える
成行注文は、スピードが命の場面でとても頼りになる武器です。いっぽうで、価格のズレや板の薄さといった弱点もあります。この記事で紹介したチェックリストとコツを実践すれば、ムリやムダを減らしながら成行の良さを引き出せます。まずは少額で操作に慣れ、板や時間帯の特徴を体感しながら、状況に応じて指値や逆指値と組み合わせていきましょう。焦らず、シンプルに。これが、長く続けるためのいちばんの近道です。
-







