PER(株価収益率)をわかりやすく簡単に解説|投資初心者でも今日から使える基礎と実践ガイド

「PERってよく聞くけど、結局なに?」という方へ。この記事では、PER(株価収益率)をわかりやすく解説します。英語では PE ratio(Price Earnings ratio)。株価が企業の利益に対して何倍評価されているかを示す、株式投資の基本中の基本です。割安・割高の目安づくりや、グロース株とバリュー株の見極め、相場局面の理解にも役立ちます。
初心者でも使える計算式や具体例、Forward PER(予想PER)とTrailing PER(実績PER)の違い、PBR・ROEなど他指標との組み合わせ、そして落とし穴まで、一気に押さえましょう。重複しがちな説明は避け、実務で使えるコツを中心にまとめています。
PERの基本:意味・仕組み・計算式
PER(株価収益率)は、投資家が「企業の1年あたりの利益に対して、株価を何倍で買っているか」を表す指標です。数字が高いほど、将来の成長期待が大きい(あるいは割高)と解釈され、低いほど期待が小さい(あるいは割安)と読まれます。ただし、単純に高低だけで善し悪しは決まりません。
計算式と用語の整理
PER = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
EPS(Earnings Per Share)= 当期純利益 ÷ 発行済株式数
単位は「倍」。例えばPERが15倍なら、「その企業の現在の1株利益の15年分を前払いして株を買っている」イメージに近いですが、実際は利益が増減し、将来キャッシュフローの割引もあるため、厳密に“何年で回収”と同義ではありません。
カンタン数値例
株価1,200円、EPS100円なら、PERは12倍です。もしEPSが翌年120円に増える見通しなら、同じ株価でもForward PER(予想PER)は1,200 ÷ 120 = 10倍に低下します。つまり、株価が変わらなくても、利益成長だけでPERは下がることがあります。
PERが示すこと・示さないこと
PERは「利益に対する市場の期待値」をざっくり可視化します。ただし、EPSの質(継続性、景気敏感度、一過性の利益や損失)や、資本効率、財務リスク、金利・インフレといったマクロ要因はPER単体では捉えきれません。だからこそ、ほかの指標と組み合わせる発想が重要です。
PERの見方:何倍なら割安?業種・景気で変わる目安
「PER○倍なら割安」という万能の答えはありません。国・市場(金利やインフレ水準)、業種特性(ディフェンシブか景気敏感か)、成長率、競争環境、会計基準などで“適正水準”は大きく変わります。そこで、まずは相対比較の軸をつくることが大切です。
業種平均と比較する発想
- ディフェンシブ(食品、医薬、通信など):利益が安定しやすく、景気後退でも落ちにくい。成長は控えめな一方で、一定のプレミアムが乗ることも。
- 景気敏感(自動車、化学、機械など):景気拡大期に利益が急増し、縮小期に落ち込む。ピーク利益で見るとPERは低く見えがち、ボトム利益で高く見えがち。
- 金融・不動産:金利の影響を強く受ける。金利上昇局面では収益構造が追い風・向かい風どちらにもなり得るため、単純比較は禁物。
- IT・グロース:高い成長期待を織り込んだ高PERが一般的。期待が剥落するとPERの収縮(リレーティング・ディレーティング)で株価変動が大きくなる傾向。
景気・金利・インフレの局面で変わるPERの常識
金利上昇は将来利益の割引率を押し上げ、一般にPERを圧縮しやすくします。逆に、金利低下・流動性拡大局面では、リスク資産に資金が向かい、PERが拡大しやすい。インフレは名目売上を押し上げることもありますが、コスト増でEPSが伸びなければPERは高止まりしがちです。つまり「相場環境によって、同じ企業でも適正PERは動く」のが現実です。
手触りのある“目安”の作り方
絶対水準ではなく相対水準を重視します。業種平均PERと自社PERを比べ、20%以上低ければ割安の可能性を検討、高ければ割高の理由(成長率・品質・独自資産など)を確認する、というような“自分ルール”を持つと判断がブレにくくなります。
PERの使い方:実践ステップとチェックリスト
投資初心者が今日からできる、シンプルな実践手順を紹介します。難しい数式は不要。公開データで十分に進められます。
実践ステップ
- 企業を選ぶ:気になる銘柄の株価とEPS(実績・会社予想・コンセンサス)を証券サイトで確認。
- PERを把握:現状PER、Trailing PER(直近実績ベース)、Forward PER(予想ベース)を並べて傾向を見る。
- 過去と比べる:同社の過去5年程度のPERレンジ(高安)を見て、いまが相対的に高いのか低いのかを把握。
- 競合・業種平均と比べる:同業3〜5社のPERと並べ、差の理由(成長率、収益の安定性、財務、安全余地)を言語化。
- 成長率と合わせる:EPS成長率とPERのバランス(例:PEG=PER÷成長率)を参考に、期待が過剰かどうかを点検。
- シナリオを置く:来期EPSが〇%成長なら、目標PERを何倍とみるかを設定し、フェアバリュー(適正株価)を計算。
チェックリスト(落とし穴を避けるために)
- EPSがマイナスではないか(マイナスだとPERは定義不能)。
- 一過性の利益・損失(特別利益、減損、為替差益など)でEPSが歪んでいないか。
- 希薄化(増資、ストックオプション、転換社債)を考慮した希薄化後EPSになっているか。
- 会計基準変更やセグメント変更で過去比較がズレていないか。
- 株式分割・併合の反映でEPSや株価が整合しているか。
- 会社予想の保守性・強気度、アナリスト予想(コンセンサス)のブレの大きさ。
- 需要サイクル(景気の山谷)と在庫サイクルが利益に与える影響。
- 為替やコモディティ価格など外部要因への感応度。
ミニ例題とシミュレーション
例:A社はPER10倍・EPS成長率5%、B社はPER30倍・成長率25%。見かけはB社が割高ですが、成長が続けば合理的なプレミアムもあり得ます。PEG(PER÷成長率)でざっくり均衡を探ると、A社は10÷5=2、B社は30÷25=1.2。一般論としてPEGが1前後に近いほどバランスが良いとされますが、業種や資本効率で適性は変わります。大切なのは「なぜそのプレミアムがつくのか」を言葉で説明できることです。
応用編:Forward/Trailing、EPS、PBR・ROEとの併用
PERは“どのEPSを使うか”で性格が変わります。直近12ヶ月の実績EPSで計算するのがTrailing PER、今期や来期の予想EPSで計算するのがForward PERです。成長企業の評価ではForward PERが重視されがちですが、外れやすい予想もあるので、実績と予想を往復しながら精度を上げましょう。
EPSの捉え方を一歩深く
EPSは「当期純利益」を基にしますが、希薄化(潜在株式)を織り込む“希薄化後EPS”や、一過性項目を除く“調整後EPS”が提示されることもあります。また、景気敏感業種では営業レバレッジが高く、売上の小さな変化でEPSが大きく動き、PERの解釈が難しくなります。安定性と持続可能性を常に確認しましょう。
PBR・ROEとの併用で立体的に見る
PBR(株価純資産倍率)は株価が1株純資産(BPS)の何倍か、ROE(自己資本利益率)は自己資本に対する利益率です。三者の関係は概ね「PBR ≒ PER × ROE」。理由は、株価=PER×EPS、PBR=株価÷BPS、EPS÷BPSが概ねROEに対応するためです(厳密には会計差異や一過性項目でズレます)。
組み合わせ評価の数値例
例:ROEが10%、PBRが1.2倍の企業なら、理論的にはPER≒PBR÷ROE=1.2÷0.10=12倍が一つの目安になります。もし市場でのPERが18倍なら、「なぜ6倍分のプレミアムが乗っているのか?」を説明できる必要があります(高い成長投資、参入障壁、ネットワーク効果など)。逆にPERが8倍なら、過小評価か、将来のROE低下リスクを市場が織り込んでいるのかもしれません。
このようにPER単体では見抜けない資本効率の情報を、PBR・ROEと組み合わせると立体的に把握できます。
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